林一記、海外から見る「日本」を学ぶ⑦

3. 合法だが過酷な売春

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 現在の日本において、売春は違法とされているが、1956年まで長きにわたって合法とされていた時代があった。江戸時代初期から大都市では、幕府によって遊女が遊郭に集められていたのだ。

 秩序と風紀を守るために、遊郭には数多くの掟があった。各遊郭は高い壁に囲まれ、堀の前にあるただ1つの門からしか入ることができない。そこを訪れる客にも従うべき行動や服装に関する掟があった。また一般女性がここに足を踏み入れることは禁じられ、反対に遊女がそこから抜けることも非常に困難であった。

 現代的な視点からは、江戸時代の売春はむしろ性的な奴隷であるといえよう。貧しい農民は借金の返済あるいは新たな借り入れのために娘を売っていた。遊郭側は女性や家族に厳しい契約とかわし、実質的に遊女が抜けられないようにしていた。
 
 また地位の低い遊女の労働条件も過酷であった。適切な医療機関など利用できるはずもなく、性病が蔓延した。遊女たちは自殺や堕胎による合併症によって若死にするのが常であった。