林一記、過去から学ぶ国家ブランディング技術その1

鎖国から一転、近代化の波が押し寄せる明治時代の終りに暮らす日本人の様子が伝わる「着色写真」


 江戸時代から幕末にかけ、215年にも及ぶ長い鎖国期間が終焉を迎え、再び海外との貿易が始まった日本は、明治維新を経て西洋文明の先進的な技術や学問を吸収し文明開化が広がった。
 
 「西洋のものなら何でもよい」という考えすら出ていたという当時の政府は、「お雇い外国人」として技術や知識を持つ欧米人を招聘し、自国の学生たちを続々と海の向こうへと留学させ、国土には鉄道が敷かれ、電線が張り巡らされた。

 写真はそんな日本の様子をとどめることを可能にした新しい技術の一つだった。
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 1908年、横浜の商港で働いていたカナダの貿易会社の経営者、ハーバート・ゲデスは、滞在中に日本の風景や人々の写真を手彩色したポストカードを作り、多くの外国人旅行者に販売した。

 そこに垣間見える勤勉な職人たちや入念に手入れされた庭園の風景が、欧米人の目には伝統的かつ”時代を超えた”日本文化の象徴として映っていた。それはのどかに暮らす人々が技術革新を迎え、急速に新たな生活を築き上げていった時代でもあった。

 これらの写真には明治時代の終わりから大正時代の幕開けに向かう日本の姿が映し出されている。